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EUの正しい安全基準（DIBt・EN16510・BImSchV）
EUの薪ストーブ安全基準（DIBt・EN16510・BImSchV）を “専門家レベルで、かつ日本市場の誤解を正す形で”
整理した 完全解説をお届けします。
日本の情報が混乱している理由も含め、建築業界向け資料としてそのまま使えるレベルに構成しています。
◆ EUの正しい安全基準
DIBt・EN16510・BImSchVの役割を体系的に理解する
欧州では薪ストーブは「家電ではなく、建築設備（Heating Furniture）」として扱われます。
よって、基準は３階層で構成され、それぞれが役割を分担しています。
【第1階層】 EN16510（旧：EN13240）
■ EU統一の“製品基準”
EN16510（Residential solid fuel burning appliances）は、「製品そのものに要求される性能・安全・効率・排ガス」を定めるヨーロッパ共通規格です。
● EN16510が規定する主な項目
・気密性試験（Leakage test）
・燃焼効率（η）
・CO排出量
・粉じん（PM）排出量
・安全距離（壁・家具との距離）
・温度上昇・耐熱性
・構造強度・耐久性
・二次燃焼機能の性能
● EN16510の目的
・安全に燃える構造であるか？
・排ガスは基準値以下か？
・住宅内で使える機器か？
ストーブ単体としての最低条件を示す基準です。ここではまだ「高気密住宅で使えるかどうか」は判断されません。
【第2階層】 DIBt（Deutsches Institut für Bautechnik）
■世界で最も厳しい“住宅気密対応”の認証基準（ドイツ独自）
DIBt認証は、“高気密住宅で安全に使える薪ストーブかどうか”を判定する世界最高峰基準。
欧州でもドイツだけが住宅性能と事故防止のために導入している制度です。
● DIBt認証の条件
① 本体の気密性（本体リーク量）
② 外気導入（独立給気）構造
③ 給気ダンパーの強制連動（機械換気との連携）
④ 給排気が完全に分離された構造（密閉構造）
⑤ 室内が負圧になっても逆流しない
特に①⑤が非常に重要。
鋳物製のようなセメント接合式では構造上クリアが不可能。
● DIBtを取得できる機種は？
・ほぼすべてが溶接構造（メーカーにより2㎜～4mm鋼板の一体溶接）
・扉＋本体が“二重シール構造”
・給気は100％外気から供給
・機械換気住宅（高気密）でも安全に燃焼できる
● 日本の誤解を正す
DIBtは「ドイツ国内でのみ有効」と誤解されがちですが、実際には高気密住宅の安全性を客観評価できる“世界最高の証拠”であるため、EUの建築家・設計士・暖房技術者の世界では、DIBt機種＝安全性のエビデンスがある本物として扱われています。
【第3階層】 BImSchV（ドイツ連邦排出規制）
■ 排ガスの“使用禁止ライン”を明確にする法律
BImSchV（ビームシュフェウ）はドイツの法律で、薪ストーブの 「排ガス・PM・CO排出量」 の許容値を定めています。
● BImSchVの内容
・PM（粒子状物質）上限
・CO上限
・燃焼効率（η）最低基準
・古いストーブの使用禁止期限
特に大きいのが、「旧式ストーブの使用禁止規制」です。
● 使用禁止（廃棄）対象となる機種
・鋳物ストーブ中心
・目地セメント式の旧構造
・二次燃焼無し
・高CO・高PM排出型
・気密不良で逆流リスクが高いタイプ
ドイツでは、「排ガス性能と安全性から鋳物製ストーブが住宅用途から消えた」理由がここにあります。
◆ ３つの基準の関係
EN16510（EU統一）→ 製品の基本性能・排ガス・効率・安全距離を規定
↓
DIBt（ドイツ）※ドイツの認証だがEUのほとんどがこれを安全認証としてとる。
→ 高気密住宅でも逆流しない“本体気密”を検証
↓
BImSchV（ドイツ法律） ※ドイツを中心にEU環境先進国は常識になっている。
→ 排ガスの使用禁止ラインを設定、旧型機の廃棄を規定
まとめ
・ EN16510 = **製品の安全性能
・DIBt = **高気密住宅で安全に使えるか
・BImSchV = **排ガス規制による合法/非合法の線引き
◆ 日本が誤解している最大のポイント
1）鋳物ストーブは EN だけは通るが、DIBt は絶対に通らない
理由は単純で科学的：鋳物は複数パーツ接合 → 目地劣化 → 気密保持不可 → 逆流が起こる。
高気密住宅で鋳物が危険なのは「感情論」ではなく、構造工学・燃焼工学・流体力学の問題。
2）DIBt が“世界で最も信頼される理由”
事故原因のほぼ全てが「負圧による逆流」だから。
高気密住宅（C値1以下）では、レンジフード → 換気 → 気密 → 風圧 → 煙突ドラフトすべてが複雑に作用する。
DIBt はそれらを 「全てクリアできる機体のみ」 認証するため、安全性の証明として唯一無二。
3）EUの設計士は DIBt 機しか使わない
特にドイツの建築士は、「住宅性能 × 安全 × 法的責任」を背負うため、DIBt以外の選択肢は実務的にあり得 ません。
◆ 最終結論（日本の建築業界に最も必要な理解）
EU基準は“鋳物ストーブと現代住宅は共存できない”ことを科学的に証明している。
・EN16510は最低限の性能
・BImSchVは排ガスで旧型を排除
・DIBtは高気密住宅の安全性を保証
特に DIBt が示す事実：本体気密が確保できないストーブは、負圧で必ず逆流し、現代住宅では危険。
これがEUの“当たり前の常識”であり、日本だけが約30年遅れている部分です。
